公開日:2016年8月1日
(注: これは素人による擬人化漫画です、解説書ではありません。
文献を参考にしていますが、私は金属や化学に詳しくありませんので、正確さは保証できません。
変更する場合もあります。正しい情報は、なるべくご自身で専門書等をご確認ください。)
突然ですが、車は何から出来ているでしょうか?
他にも、10円玉や、ジュースの缶は……?
冷たくて、硬くて、中には磁石にくっつく物も……?
それらはすべて、金属から出来ています。
金属はとても身近な物です。
有名なものだと、鉄やアルミニウム、金……
種類もたくさんあります。
私達の生活を豊かにするのに、欠かせない存在ですよね。
ベリリウムも、そんな金属の一つです。
ただし、ちょっと変わり者です。
そんな個性的な金属「ベリリウム」について、紹介します。
ベリリウムって、どんな金属なんでしょうか。
簡単に言うと、すごく軽いのに、とても強い金属です。
化学だと、周期表の4番目の元素としても知られています。
美しい宝石の原料でもあります。(後ほど解説)
でも、「ベリリウム」という金属、日常ではあまり聞いたことがありませんね。
実は、一般的にはあまり知られていない金属です。
高校の化学の授業でも、名前は知ってるけどちょっと地味な存在ではありませんでしたか?
ベリリウムとはいったい、何者なのでしょうか。
身近な金属とは違う、ちょっと特別な道を歩む金属です……
ベリリウムはすごい力を持っています。
一円玉の原料であるアルミニウムより軽いです。
ですがとても硬く、簡単には変形しません。
しかし高温になると、展延性(柔軟に変化する力)が増します。
そして、融点や沸点(溶ける温度、沸く温度)も比較的高いので、少しの熱では溶けません。
特に「音速」(音が伝わる早さ)は、およそ13000m/sと、他の金属より断トツに高いです。
かなり軽い金属にも関わらず、他の金属と同等、それ以上のポテンシャルを持っているんです。
どんな金属なのか、見てみたくありませんか?
軽くて強いなら、色々な物に使われてそうですよね。
ロケット?X線?
なんだか凄そうだけど、想像もできないような部品ばかりですね……
しかし、これらもベリリウムの主な活躍先なんです。
周りでは売ってなさそうですね……
これではベリリウムを探すのは、難しそうです。
役立ちそうなのに、なぜ身近には無いのでしょうか?
実は、ベリリウムにはいくつかの「残念な点」があるのです……
実は、ベリリウムには毒があります。
粉末が危険で、吸うと中毒を引き起こし、最悪命に関わってしまいます。
ベリリウム症と呼ばれていて、扱いには充分注意しなければなりません。
加工が非常に難しいのです。
軽金属の一つではあるのですが……
専用に安全を施せば、ベリリウムは活用できそうですよね。
機械の部品を全部ベリリウムにすれば、全体も軽くなって、省エネも期待できそうです。
しかし毒性を抜きにしろ、ベリリウムはたくさん使える金属ではありません。
ベリリウムは高いんです……
(価格は変動するので具体的には言えませんが……)
なぜそんなに高いのか、それにも理由があります。
ベリリウムは数が少ないのです。
宇宙でも存在が少なく、レアメタルの一つにも指定されています。
(でもベリリウムが豊富な恒星もあるそうです。)
また生産技術も簡単ではありません。
高くて毒もあって数も少ない金属。
高い能力の反面、様々な強い癖がベリリウムを使いにくくしています。
実際、ベリリウムでなくても、代用できる物も多いです。
なので、身近な物にはなりにくく、日常で知られることもありません。
ベリリウム自体に罪はないんだけれどね……
とても硬くて強いベリリウム。高温下では柔軟に変形できる力が高まります。
しかし温度が低くなると、粉砕できるほどもろくなってしまいます。
硬くてもろいと聞くと、少しわかりづらいですが
傷は付きにくいけど、硬い分衝撃が吸収しにくいんだと思います。(予想ですが)
長所よりも、欠点の方が分かりやすいベリリウム……
ベリリウムは本当に残念な金属なのでしょうか?
いえ、実はとても重要な金属なんです。
ベリリウムはいわゆる「特別な場所」では、とても活躍しています。
さっきの「X線菅の窓」を例に出してみましょう。
X線菅とは、体の検査でもお馴染みの「X線」という線を発生させるために使われる菅です。
そのX線を取り出すのが、特殊な「窓」です。
それを作るには、原子番号が小さい元素が必要です。X線をよく通すからです。
実は3番目に、電池でも知られている「リチウム」という金属があります。
リチウムは、金属の中で最も軽く、原子番号が小さいです。
しかしリチウムは、大気中だと「酸化」して、性質が変わってしまいます。
ベリリウムは酸化皮膜というバリアのような物ができるため、性質が変わりません。
水や空気にも強くなります。
つまり「X線菅の窓」は、ベリリウムにはぴったりな役割なのです。
さらに、ベリリウムは単独よりも、主に合金 (他の金属と混ぜる)にされます。
銅に混ぜてできた「ベリリウム銅」という金属は、銅の約六倍の強度を持つとても強い金属です。
火花が出ないし、磁石にもくっつきません。
ガスや油等がある環境でも使え、バネや工具などの材料にも役立っています。
ベリリウム銅なら、いつか聞く機会があるかもしれません。
そして、先程の「宝石」についてですが
これはベリリウムが発見され、後に名前の由来にもなった「ベリル」という鉱物が関わっています。
ベリルからできる宝石は、エメラルドやアクアマリン等があります。
ベリルに他の元素が混ざることで、色が変わります。
クロムが混ざるとエメラルド、鉄が混ざるとアクアマリンの色になるんです。
つまり、エメラルドとアクアマリンの成分は、ほぼ同じなんです。
……ベリリウム、強いだけじゃないんですね。
音の伝達の良さは、スピーカーの振動板に活用されます。
熱への耐久力や軽さは、宇宙船や航空機の部品に
また原子の性質は、原子力に関わる分野に……
一つ一つは難しい分野ですが、すべて私達の生活には必要な技術です。
ベリリウムは影ながらも、私達の生活を支えてくれているのです。
実は、面白い部分もあります。
塩化ベリリウムは、甘い味がするのだそうです。
もちろん決して味見してはいけません。
でもその味から、最初は「グルシニウム」と名付けられていました。
酸化ベリリウムが、甘土と呼ばれていた頃もあったそうです。
実は甘いかもしれない。
意外な一面ですね。
実力はあるけど、毒などで使い道が限られる、残念系金属ベリリウム。
今はちょっと地味だけれど、いつかは身近でその名前を聞ける日が来るはず。
ベリリウムの今後の活躍に期待です。
参考文献
桜井弘『元素111の新知識 第2版増補版』2013年
セオドア・グレイ『世界で一番美しい元素図鑑』2010年
John Emsley『元素の百科事典』2003年
山口潤一郎『図解入門 よくわかる最新元素の基本と仕組み』2007年
参考リンク
Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ベリリウム
セオドア・グレイ HPより
http://www.theodoregray.com/Periodictable
/Elements/004/index.s7.html
日本ガイシ ベリリウム銅
http://www.ngk.co.jp/product/metal/beryllium/